インスタグラムには、心の健康を損なうリスクがあると言われています。もしかしたら、みなさんのなかにも、インスタをはじめソーシャルメディアを使う度に憂鬱な気持ちになっている人もいるかもしれません。
実際に、イギリスの王立公衆衛生協会(Royal Society for Public Health)が発表した『#StatusOfMind Social media and young people’s mental health and wellbeing』というレポートでは、若者の精神的健康と幸福に最も悪影響をもたらすSNSは、インスタとSnapchatであると結論しています。
そこには、一体どのような理由があるのでしょうか?
この記事では、インスタがメンタルに悪いと言われる理由を考察しています。また、病む前に離れるメリットとやめる方法も紹介しているので、インスタとの距離感を考え直したいという人たちは参考にしてみてください。
インスタがメンタルに悪い5つの理由
さて、インスタを含むSNSがメンタルに悪いと言われるのは、なぜなのでしょうか?
ここでは、『#StatusOfMind Social media and young people’s mental health and wellbeing』に基づき、5つの理由を取り上げていきます。
理由1 不安や欠乏感を煽る
第1に、ユーザーの投稿を通じて不安や欠乏感が煽られることでメンタルに悪影響があると考えられます。
特に、RSPHの報告には、SNSに1日当たり2時間以上を費やしているヘビーユーザーは心の健康を悪化させる可能性が高いという研究結果が紹介されていました。どうやら、他者と比較することで生まれる絶望感と人生に対する非現実的な期待感がネガティブな感情を生み出すきっかけになっているようです。
たしかに、あなたの知り合いが友達と休日に幸せそうな姿で遊んでいる様子を見て、「自分には、休みの日に遊べる友達がいない」という不安を覚えたり、尊敬する友人の活躍ぶりを見て頑張ろうと思ったけれども、あまりにも理想と違いすぎることから自暴自棄になったりする人はいるのかもしれません。
インスタを含むSNSでは、ポジティブな評価を得るために現実を誇張して表現する人たちがいます。まるで小説のように人生のストーリーを語るわけです。それが身近な人だと、「自分はなんと平凡なのだろう」とため息をつきたくなるのはわかります。しかし、それは単なる嘘だったなんてこともあるのです。
理由2 睡眠不足を引き起こしている
第2に、インスタなどのSNSを使うことで睡眠不足を引き起こすことからメンタルに悪いと言われています。
RSPHの報告書では、ソーシャルメディアを利用する習慣が睡眠を阻害すると指摘しています。
多くの研究は、ソーシャルメディアの使⽤の増加が若者の睡眠の質の低下と重⼤な関連があることを⽰しています。夜寝る前に携帯電話、ラップトップ、タブレットでソーシャルメディアを使⽤することも、通常の⽇中よりも睡眠の質の低下と関連しています。ソーシャルメディアの使⽤。寝る前に LED ライトを使⽤すると、眠気を引き起こす脳内の⾃然なプロセスや、睡眠ホルモンであるメラトニンの放出が妨げられ、ブロックされる可能性があると考えられています。これは、眠りにつくまでに時間がかかり、毎晩の睡眠時間が減少することを意味します。
RSPH『#StatusOfMind Social media and young people’s mental health and wellbeing』より引用(最終確認日:2023年10月1日)
たしかに、ベッドに入ってからインスタを開いて、気がつけば深夜から朝方になっていた経験のある人たちもいるはずです。睡眠と心の健康が密接につながっている以上、メンタルに悪影響があるのも肯けます。
理由3 見た目を否定する
第3に、インスタはビジュアルを重視するSNSであるため、自分の見た目を否定するイメージが作られてしまうという問題を孕んでいます。
とりわけ、インスタでは、顔写真を加工してプロフィールに設定している人たちがたくさんいます。細い体に、二重まぶた、すっきりした鼻筋など、美しい顔の基準がフォーマット化されていて似たような容姿のアカウントが無数に存在していると言ってもよいでしょう。
しかし、いくらデジタル上で加工しても現実の自分は変わるわけではありません。その結果、見た目を否定する感情が強まり、メンタルに不調をきたすような過剰なダイエットが横行する危険性もあるわけです。
加えて、非現実的な外見のイメージを求めるあまり、美容整形に依存する人もいます。もちろん、自分の好きな顔になりたいという気持ちはわかります。けれども、それが作られたイメージによる自己否定の結果だとすれば、いつまでも満足できない状態になるおそれがあるのです。
理由4 ネットいじめの被害に合う
第4に、インスタなどのSNSを使ったネットいじめの被害に合ったことで心に深い傷を負った人もいます。
恐ろしいことに、ソーシャルメディアを使ったいじめは学校が終わっても止むことはありません。インターネットを介して24時間、常に嫌がらせを受けるリスクがあるわけです。実際、2023年に報告された文科省の「問題行動・不登校調査」では、ネットいじめの件数は過去最大を記録しています。
2021年度に全国の小中高校などで認知したいじめが過去最多の61万5351件だったことが27日、文部科学省の「問題行動・不登校調査」で分かった。SNS(交流サイト)などを通じ嫌がらせを受ける「ネットいじめ」も認知件数が初めて2万件を超えた。
日本経済新聞『ネットいじめ、過去最多2万件超 文科省の全国調査』より引用(最終確認日:2023年10月1日)
いじめはメンタルに悪影響をもたらすだけではなく、学校に行けなくなることで社会に参加する機会を奪い去ります。加害者のいじめが終わったとしても、被害者の困難は継続します。ソーシャルメディアがそのリスクを肥大化させている以上、プラットフォーム側の運営側もまた積極的に対策を講じる必要があります。
理由5 取り残される恐怖を覚える
第5に、RSPHはSNSによって「取り残される恐怖(FoMO)」が助長されると指摘しています。
具体的に言えば、インスタをやめたり、見ない時間が増えたりすると、「チャンスを逃すのではないか?」と思い込んでしまうわけです。例えば、仲が良い同級生や同僚の行動を逐一チェックしておかないと、自分だけ損をするという恐怖に襲われるわけです。
その結果、日常的にプレッシャーを感じたり、本来やるべきことに集中できなかったりするなど、生活の中で感じるストレスが増大すると考えられるのです。
病む前にインスタから離れる方法
以上のリスクを踏まえたうえで、自分が病む前にインスタから離れるには、どうすればよいのでしょうか?
これに関しては、いくつかの選択肢があると考えられます。具体的な方法論は以下のとおりです。
病む前にインスタから離れる方法
- 方法1 アカウントを削除する:退会することで強制的に離れる。
- 方法2 デジタルデトックスを始める:定期的に電波の届かない場所に行ってリフレッシュする。
- 方法3 別な習慣を取り入れる:スポーツや読書など日常的にやることを増やす。
- 方法4 スマホを預ける:家族などの信頼できる人にスマホを一時的に預かってもらう。
- 方法5 友達と会う機会を増やす:インスタではなくリアルで交流する機会を増やす。
ただし、「どうすればやめられるのか?」を考え過ぎるよりも、「やめると決めて行動すること」を優先したほうがうまくいく可能性があります。一人ではうまくいかないときは心療内科の医師に相談するのもよいでしょう。
プラットフォーム側にも責任がある
もちろん、インスタの利用者が離れるメリットを理解した上で頻度を下げるなどの工夫をするのは重要です。しかし、プラットフォーム側にも責任を追及するべきです。むしろ、人に優しい設計思想を持たないと、中長期的には、トラブルを抱えたユーザーが離れていくでしょう。
具体的には、メンタルの不調に繋がる要素をできるだけ排除する仕組みづくりが必要だと思います。RSPHの報告書にも、ユーザーが健康的に利用できる時間を超えた時に警告のポップを表示したり、加工が施された画像を表示でわかるようにしたりするなど、具体的な提言が記載されています。
今後、研究機関やメディアなどの第三者が客観的で権威のあるデータや提言をユーザーに向けてわかりやすく発信することで、そうせざるを得ない状況ができるとよいのですが、まだまだ時間はかかるかもしれません。
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