みなさんのなかには、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)との距離感について悩んでいる人たちもいるはずです。実際、他者の投稿を見る一方で毎日のように情報を受け取っても、実生活が変わるわけでもないことから時間だけを浪費している感覚に陥っている人もいるかもしれません。
それなら、いっそのことSNSをやめるのも選択肢のひとつです。実際、ソーシャルメディアから離れることで楽になったという意見もあります。実際に、筆者もまたそのひとりです。
この記事では、「SNSをやめたら楽になった?」をテーマにやめる理由やメリット、SNS断ちの後に訪れる孤独と幸せの正体について考察しています。X(旧Twitter)やインスタとの距離感について考えるきっかけになれば幸いです。
SNSをやめたら楽になった話
さて、SNSをやめたら楽になるのは、本当の話なのでしょうか?
結論から言えば、SNSから離れることで生活が快適になることはあります。ここでは、実際にソーシャルメディアから距離を取っている筆者の体験談を紹介します。
SNSをやめたら楽になった話
筆者:40代男性
20代の頃はX(旧Twitter)やFacebookを頻繁に利用していました。スマホが普及して間もない頃で、中学や高校時代の友達とSNSをきっかけに再会し、久しぶりに会って思い出話をしたこともありました。SNSを通じて人とのつながりを実感したような感覚だったと思います。
初めて会った人ともFacebookで繋がることが当たり前になり、気がつけば友達リストは1000人以上に達していました。自分の頑張っている姿を投稿すれば「いいね」や「コメント」が集まり、ポジティブな気持ちになることも多かったと思います。
しかし、大学を卒業してしばらくした頃、ぴたっとソーシャルメディアで近況報告する習慣はなくなりました。社会に出て人生の難しさを体験していると、必ずしも前向きな気持ちを表現できるわけではありません。実際、知り合いがSNSでネガティブなことを呟くと、スルーされるのが常でした。
なんとなく他者からの評価が中心の世界に息苦しさを覚えつつも、投稿を見るだけの時間は増えていきました。気がつくと1時間も経っていて、やるべきことを後回しにして罪悪感を覚えたこともありました。時には、同期が活躍している姿を真っ直ぐ見れない自分に絶望したこともあります。
そこで、思い切ってSNSをやめました。すぐに変化を感じるわけではありませんでしたが、関係性の薄い他者の情報を見る機会が減り、次第に自分と身の回りにいる本当に大切な人たちだけに焦点が定まってきました。
今思い返せば、1000人いても本当に大事なことを話すのは、その中でも1人や2人です。ある意味では、仮初のつながりだったわけです。冷静に考えれば、たいした交流したことのない人に自分の私生活を共有したところで意味なんてありません。「あっそう」ってだけなんです。
それでも、なんとなくFacebookを開いて、人の投稿を見てしまう。そんな習慣に支配されていた時と比べると、自分にとって本当に必要な時間の使い方ができるようになって楽になった気がします。そして、以前よりもマイペースで人生を進められるようなりました。
SNSをやめた理由
改めて、SNSをやめた人たちには、どのような動機があったのでしょうか?
ここでは、大きく3つの理由に焦点を当てて説明していきます。
理由1 時間がもったいない
第1に、SNSに費やしていた時間がもったいないことからやめたと考えられます。
10代や20代ならともかく、30代以降は仕事や子育てが本格的に忙しくなっていきます。すなわち、ソーシャルメディアで他人の私生活を覗いている暇なんてないわけです。
加えて、SNSには、自分の興味・関心に基づいてコンテンツを無限に提案してくるサジェスト機能が実装されています。その結果、一度開くと、気がつけば1時間が経過するなんてこともあります。例えば、お笑いや雑学など、今すぐに必要ではなくても楽しい動画や投稿はついつい見てしまいますよね。
しかしながら、その時間の浪費が実生活を貧しくさせる危険性がある以上、スパッとやめるのも大事な決断なわけです。以上のことから、「本当に大切なことに時間を使いたい」という欲求がSNSをやめる動機になっていると推察されます。
理由2 他人の投稿がメンタルに悪い
第2に、他人の投稿がメンタルに悪いと感じてSNSをやめた人もいるでしょう。
例えば、インスタグラムの投稿を見たときに、どこもかしこも可愛い子やイケメンばかりで、自分の容姿に自信のない人は「どうして自分だけブサイクに生まれてきたのだろうか……」と他者と比較して落ち込んでしまうこともあるでしょう。また、過剰な美の演出が健康を損ねるライフスタイルを助長するという問題があります。
RSPHは14歳から24歳の1479人を対象に、人気の高いSNS5社の影響を調査。それぞれのSNSで経験する不安感や鬱(うつ)、孤独感、いじめ、自分の外見への劣等感など14項目について質問した結果、写真投稿サイトのインスタグラムが若者の心に与える不安感や孤独感、いじめ、外見への劣等感など否定的な影響が、他のSNSよりも高かったという。
BBC JAPAN『「若者の心の健康に最悪」なSNSはインスタグラム=英調査』より引用(最終確認日:2023年9月28日)
上記の引用が示しているとおり、ソーシャルメディアには負の影響もあります。特に、外見への劣等感という他人との比較の中で生まれるネガティブなイメージはSNSからぬぐい切れないようです。そのほかにも、メンタルに悪い要因がいくつかあることを指摘しており、その影響を実感した人たちからやめている可能性があります。
理由3 実生活にプラスがない
第3に、実生活にプラスがないことからSNSをやめた人たちもいると推察されます。
もちろん、ソーシャルメディアによってさまざまな情報にアクセスできるようになって、以前よりも賢い人が増えたという見方もあります。しかし、情報を受け取る一方で行動しなければ実生活はよくなりません。チャレンジャーの答えばかりを脳内にコピペするばかりで、学んだ気になるのは恐ろしいことです。
結局のところ、自分で挑戦して問題を解かない人は、いつまでもエンドユーザーとして消費するだけの存在になってしまいます。インフルエンサーの食い物になって終わりなわけです。今まで振り返ったときに、SNSからの恩恵を感じないと結論した人からやめていくのは自然の摂理ですよね。
SNSをやめた人が得られるメリット
それでは、SNSをやめた人が得られるメリットについて具体的にリストアップしてみましょう。
SNSをやめた人が得られるメリット
- 集中力の向上:SNSの通知や更新に気を取られることなく、作業や学習に集中することができます。
- プライバシーの保護:SNSを使用しないことで、個人情報の流出リスクやプライバシーの侵害を防ぐことができます。
- リアルな人間関係の深化:オンラインのコミュニケーションよりも、直接の対面でのコミュニケーションを重視することで、より深い人間関係を築くことができます。
- メンタルヘルスの向上:SNS上での比較やネガティブなコメントから距離を置くことで、精神的なストレスを軽減することができます。
- 時間の節約:SNSをチェックする時間がなくなることで、他の有意義な活動や趣味に時間を使うことができます。
- 現実の価値観の維持:SNS上の情報やトレンドに流されず、自分自身の価値観や考えを大切にすることができます。
- デジタルデトックスの実現:SNSをやめることで、スマートフォンやデジタルデバイスの使用時間を減少させ、デジタルデトックスを実現することができます。
- 睡眠の質の向上:SNSの使用を控えることで、寝る前のスマートフォンの使用を減少させ、質の良い睡眠を得ることができます。
これらのメリットは、SNSの使用方法や頻度、個人のライフスタイルによって異なる場合があります。SNSをやめることのメリットを最大限に活かすためには、自分自身の生活や価値観に合わせて、適切なバランスを見つけることが重要です。
SNSをやめたら孤独になる?
一方で、SNSをやめるとネット上のつながりが途絶えて孤独になるという人たちもいます。実際に、X(旧Twitter)では、SNSから離れると孤独感を覚えるというユーザーの投稿が散見されます。
たしかに、オフラインの人間関係が希薄な人たちにとって、SNSのつながりは大切なのは理解できます。むしろ、ネットを通じて仲の良い友達ができたのなら、ソーシャルメディアの利点を引き出せている側と言えるでしょう。SNSそれ自体が決して悪いわけではなく、結局のところは使い方次第なのです。
SNSをやめたら幸せを感じる人もいる
ロリンス公衆衛生大学院(RSPH)が提出した報告書で指摘されていたように、SNSが個人にとってネガティブな影響をもたらすリスクは少なからずあるでしょう。その意味では、SNSから離れた結果、メンタルを危機に陥れる問題から解放されて、幸せを感じる人もいると考えられます。
とはいえ、SNSは単なる仕組みである以上、プラスとマイナスの影響を隔てるのは使いこなす側次第です。すなわち、自分が主体的に利用してポジティブな価値を作りにいくのもよいですし、距離を取って違うことに時間を使うのもよいんです。大事なことはSNSに潜む悪意に利用されないことだと言えるでしょう。
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